召喚士が召喚した召喚士~基礎から始める召喚マネジメント講座~ 第8話 竜は人を見ていた

召喚士が召喚した召喚士~基礎から始める召喚マネジメント講座~ 第8話 竜は人を見ていた 創作実験
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召喚士が召喚した召喚士~基礎から始める召喚マネジメント講座~ 第8話 竜は人を見ていた 人物相関図

 ※人物画像・相関図の転載、再配布、改変利用はご遠慮ください。

一 二つの村

 リグル村の仮設本部に、カイル・レイヴァンが戻ってきた時、彼の外套には灰がついていた。

 その灰が風で飛ばされるより早く、カイルは机の前で姿勢を正した。

「北東方面、二つの村が燃えました」

 リオル・ロステルは、一瞬、言葉の意味を理解できなかった。

「二つ……?」

「はい」

 カイルは地図を広げた。

 リグル村のさらに北東。

 森と街道の間にある、小さな村が二つ。

 そこに赤い印が置かれる。

「ロウゼ村、カンナ村。どちらも火災被害。通常火災ではありません」

 メルセナ・オルブライトは、地図を見たまま尋ねた。

「死者は」

「確認中です。全滅ではありません。避難民は出ています」

 その答えに、リオルは少しだけ息を吐いた。

 全滅ではない。

 だが、それは安心できる言葉ではなかった。

 燃えた。

 二つの村が。

 人が住んでいた場所が。

「ギルドにも避難民の受け入れ依頼が入っています」

 ミレイユ・グレインが通信水晶から顔を上げた。

「負傷者多数。煙を吸った者、火傷を負った者、家族とはぐれた者もいます。証言は混乱しています」

「原因は」

 メルセナが問う。

 カイルは短く答えた。

「目撃証言は一致しています。巨大な赤い竜影。高温の火。森火災と同種の熱痕です」

 赤い竜。

 その言葉だけで、仮設本部の空気が変わった。

 リオルの背中に、冷たいものが走る。

 前回、火災現場でカイルは「竜種由来の可能性」を口にした。

 メルセナは断定しなかった。

 けれど今、証言は赤い竜影を指している。

「赤竜、なんですか」

 リオルの声は、自分でも少し小さく聞こえた。

「目撃上は」

 カイルは言った。

「ただし、個体名も目的も不明です」

 メルセナはしばらく黙っていた。

 表情は変わらない。

 だが、沈黙が重い。

「証言を集めます」

「焼け跡ではなく?」

 リオルが思わず聞いた。

「焼け跡も見ます。ですが、先に生存者です」

「どうしてですか」

「生存者の記憶は、時間とともに崩れます」

 メルセナは言った。

「煙、恐怖、痛み、周囲の叫び声。そうしたものが混ざれば、見たものと聞いたものの境目が曖昧になります。今聞くべきものがあります」

 ミレイユがすぐに記録板を抱え直す。

「避難所へ連絡します。証言の記録準備を」

「お願いします」

 カイルが地図上の二つの赤い印を見下ろした。

「王国軍は、第二防衛線の一部を北東へ再配置中です。ただし、赤竜そのものへの即時交戦は避けています」

「正しいです」

 メルセナは言った。

「今、無理に当てれば、被害が広がります」

「閣下」

「はい」

「赤竜が次に動く前に、目的を掴む必要があります」

「そのために、証言を聞きます」

 リオルは、地図の上の赤い印を見ていた。

 二つの村。

 燃えた村。

 そして、赤い竜。

 リグル村を守ったばかりなのに、火はもう別の場所へ移っていた。

二 避難民

 避難所は、リグル村の南側にある空き倉庫を使っていた。

 村人たちが持ち寄った布と毛布が床に敷かれ、負傷者が横になっている。

 焦げた服。

 すすけた顔。

 泣き疲れて眠る子ども。

 誰かの名前を繰り返す老人。

 リオルは足を止めそうになった。

 だが、メルセナは止まらなかった。

 ただし、急がなかった。

 負傷者の間を通る時も、声を荒げることはない。淡々としているのに、不思議と周囲の人間が道を開ける。

 ミレイユは記録板を持ち、村ごとに証言者を分けていた。

「最初に、ロウゼ村の避難者です」

 すすけた顔の男が、椅子に座っていた。

 腕に包帯を巻いている。

 男はメルセナを見ると、立とうとした。

「そのままで構いません」

 メルセナが言った。

「見たことを、順番に話してください」

 男は震える息を吐いた。

「最初から焼かれたわけじゃないんです」

 リオルは顔を上げた。

「竜は、村の上に降りて……見ていたんです」

「見ていた?」

「はい。家を、道を、広場を。まるで、何かを探しているみたいに」

 ミレイユの筆が動く。

 メルセナは口を挟まない。

「誰かが悲鳴を上げて、走って……竜が、そちらを見ました。それから、鼻を鳴らしたんです」

「鼻を?」

 リオルが聞き返す。

 男は、自分でも信じられないという顔をした。

「そう見えました。火を吐いた、というより……熱い息が広がったみたいで。屋根の藁が、一気に燃えました」

 リオルは息をのんだ。

「それは、火を吐いたのとは違うんですか」

「私には分かりません。ただ、竜がこちらを焼こうとして口を開いた、というより……怒った獣が息を荒げたら、村が燃えたように見えました」

 男の声が詰まった。

「でも、燃えたんです。家も、荷も、人も。だから、同じことかもしれません」

「分かりました」

 メルセナは静かに言った。

「今はそこまでで構いません」

 次の証言者は、カンナ村の女だった。

 手を握りしめ、ずっと床を見ていた。

「逃げた者を、すぐには焼かなかったんです」

「赤竜が、ですか」

 カイルが確認する。

 女は頷いた。

「顔を、見ていた。いや、顔かどうかは分かりません。でも、一人一人を……」

「一人一人」

 リオルは思わず繰り返した。

 女は、リオルの方を見た。

 その目は赤く腫れていた。

「あれは、ただ暴れていたんじゃない。誰かを探していたんです」

 避難所の奥で、誰かがすすり泣いた。

 ミレイユが別の記録板をめくる。

「同様の証言、別の村からもあります。ロウゼ村では、赤竜が広場を見回していた。カンナ村では、逃げる村人を追う時に、即座に焼かず、確認するように頭を下げた、と」

「証言を分けてください」

 メルセナが言った。

「焼いた証言と、探していた証言を混ぜないように」

「承知しました」

「恐怖による誤認も候補に入れてください。ただし、二つの村で似た証言が出ている以上、捨ててはいけません」

「はい」

 リオルは、避難民たちを見た。

 村を焼かれた人たち。

 家を失った人たち。

 逃げてきた人たち。

 その人たちが、同じようなことを言っている。

 赤竜は、何かを探していた。

 人を、一人一人見ていた。

 その言葉が、火よりも怖かった。

三 竜が人を見る

 竜が村を焼いた。

 それだけなら、恐ろしいが、まだ分かる気がした。

 怒り狂った巨大な存在が、目の前のものを壊す。

 火を吐き、家を焼き、森を焦がし、人を逃げ惑わせる。

 そんな光景なら、想像できてしまう。

 想像できてしまうこと自体が嫌だった。

 けれど、人を一人一人見ていた、という証言は違った。

 竜が人を見ていた。

 人間を、人間として見分けようとしていた。

 その方が、ただ焼かれたという話よりも、ずっと怖かった。

 避難所を出たあと、リオルはメルセナに尋ねた。

「先生、赤竜って、人間を見分けるんですか」

「通常は、見分けません」

「見分けない」

「赤竜にとって、人間は小さすぎます。敵として認識することはあっても、一人一人を確認する対象ではありません」

「じゃあ、どうして」

「そこが問題です」

 メルセナは、避難所の外に置かれた粗い木机の前に立った。

 ミレイユが証言記録を広げる。

 カイルが地図を置く。

 二つの村の位置。

 燃えた範囲。

 避難民の移動経路。

 赤竜の目撃位置。

「赤竜が村を焼くこと自体は、あり得ます」

「あり得るんですか」

「怒れば、です」

 メルセナは淡々と言った。

「ですが、怒りで焼くなら、探す必要はありません」

 カイルが頷く。

「破壊そのものが目的なら、村人の顔を確認する意味がない」

「はい」

 ミレイユが記録を確認する。

「二つの村で、何かを探しているようだった、という証言が出ています」

「証言をそのまま信じすぎてはいけません」

 メルセナは言った。

「ですが、二つの村で似た証言があるなら、捨てることもできません」

「赤竜が人間を探していた、としたら」

 リオルは言った。

「通常ではあり得ません」

 メルセナが即答した。

 リオルの喉が鳴る。

「あり得ないのに、そう見えた」

「はい」

「じゃあ、あり得ない理由がある」

 メルセナが、少しだけリオルを見た。

「よい整理です」

 リオルは嬉しくはならなかった。

 今の答えは、褒められても怖いだけだった。

四 赤竜を怒らせた人間

「赤竜が人間を探していたとして、何を探すのでしょう」

 カイルが尋ねた。

 メルセナは地図を見たまま答える。

「人間そのものではないでしょう」

「人間を見ていたのに?」

 リオルが言う。

「人間に興味があるのではなく、特定の人間が持つ何か、あるいは特定の人間がしたことに反応している可能性があります」

 ミレイユが記録板に線を引く。

「赤竜を怒らせることをした人物がいる」

「または、赤竜から何かを盗んだ人物がいる」

 カイルが続けた。

 リオルは思わず聞き返した。

「赤竜から、盗む?」

「仮説です」

 メルセナはすぐに言った。

「そんなこと、できるんですか」

「通常は不可能です」

「不可能」

「はい」

 メルセナは、証言記録を指で押さえた。

「ただし、赤竜が何かを探している。人間を確認している。村を焼いてまで探している。その証言を仮に正しいと置くなら、赤竜にとって重要なものを人間が持ち去った可能性は、候補に入ります」

「でも、赤竜から盗むなんて」

「あり得ないに近いです」

「じゃあ」

「近いだけです。不可能と断定するには、まだ情報が足りません」

 リオルは黙った。

 あり得ない。

 でも、消せない。

 最近、何度も似たことを聞いている気がした。

 分からないものを、分からないまま置く。

 あり得ないものも、証言と状況がそれを指すなら、完全には捨てない。

「可能性は四つ」

 メルセナは言った。

「一つ。赤竜を怒らせることをした人間がいる。二つ。赤竜から何かを盗んだ人間がいる。三つ。赤竜と特別な契約、または因縁を持つ人間がいる。四つ。村人の証言が誤認である」

 ミレイユがそのまま記録する。

「現時点で、最も太い線は」

 カイルが問う。

「赤竜から何かを盗んだ者がいる、です」

 メルセナは言った。

 リオルは地図を見る。

 燃えた二つの村。

 避難民の証言。

 赤竜。

 そして、人間を見ていたという話。

 赤竜が人間を探す。

 それだけで、何かが大きくずれている気がした。

五 赤竜から盗むということ

「赤竜から盗むのは、並の盗賊では不可能です」

 メルセナは、最初にそう釘を刺した。

「どうしてですか」

 リオルが尋ねる。

「魔力で分かります。気配で分かります。熱の流れ、空気の乱れ、地面の振動。赤竜に近づくというだけで、生き物として目立ちます」

「隠れても?」

「隠れたつもりになるだけです」

 カイルが続ける。

「魔道具で隠れれば」

「魔力で分かります」

 メルセナは即答した。

 ミレイユが少し考える。

「精霊具なら」

「人間や番犬相手なら補助になるかもしれません。ですが、赤竜相手に通用するとは考えにくい」

「精霊具でも駄目なんですか」

 リオルが聞く。

「駄目とは言いません。ですが、精霊具は基本的に効果が小さい。足音を散らす、匂いを流す、衣擦れを紛らせる。その程度の補助で、赤竜の感知を抜けられるとは考えにくい」

「でも、もし感知を抜けられたら」

「それでも終わりではありません」

 メルセナは地図の外側に、小さな円を描いた。

「赤竜は、洞窟や山腹の深い場所を棲み処にすることが多い。仮に財宝や所有物があるなら、簡単に近づける場所には置きません」

「そこへ行くまでに」

「魔獣や地形、熱、空気の薄さ、赤竜の眷属、あるいは罠。障害はいくつも考えられます」

 カイルが腕を組む。

「戦闘が起これば、赤竜も気づきます」

「はい」

 リオルは眉を寄せた。

「じゃあ、やっぱり無理じゃ」

「無理に近いです」

 メルセナは言った。

「しかし、だからといって不可能とは断じません」

「どうしてですか」

「何かしらの手段で、赤竜の感知を避け、洞窟内を移動し、魔獣との遭遇を避け、目的物を持ち去った可能性は、ゼロとは断言できないからです」

「ゼロじゃない」

「はい」

 カイルが低く言う。

「あり得ないが、消せない」

「正確です」

 ミレイユが記録板の端に、候補として線を引いた。

「赤竜からの盗難可能性。極めて低いが、現時点では棄却不可」

 リオルは、その文字を見た。

 極めて低い。

 でも、消せない。

 それが一番怖い気がした。

六 地図の端の噂

 ミレイユが、ふと記録板をめくった。

「関連未確定の周辺記録に、一件あります」

 メルセナが顔を上げる。

「何ですか」

「北東街道沿いの噂です。気配を消す盗賊」

 リオルは息を止めた。

「あ……前に記録した」

 カイルもすぐに反応した。

「警備が厚い場所を狙う割に、盗品の価値が小さい。人目や番犬を抜ける。魔力感知にかかる痕跡が薄い、という噂でした」

「鍵や扉を物理的にすり抜けるわけではなく、侵入技術が高い盗賊と見ていた件ですね」

 メルセナが確認する。

「はい」

 ミレイユが答える。

「ギルド側では関連未確定の周辺記録として残していました」

 リオルは、地図の端を見た。

 気配を消す盗賊。

 前は、火災に比べれば小さな噂に見えた。

 盗まれた物も大したものではなく、むしろ奇妙なのは、警備が厚い場所ばかり狙うことだった。

 盗賊は探さなかった。

 火災と関係があるとは言えなかったからだ。

 けれど今、その小さな点が、地図の中心へ引っ張られている。

「人間相手なら、可能性としてはあります」

 メルセナは言った。

「赤竜相手には?」

 リオルが尋ねる。

「とても思えません」

 メルセナは即答した。

 リオルは少しだけ肩を落とす。

「でも」

「はい」

 メルセナは続けた。

「現状では、それがもっとも太い線です」

「太い線」

「赤竜が何かを探していた。人間を確認していた。赤竜から何かを盗んだ者がいる可能性がある。赤竜から盗むには、通常の隠密では足りない。そこで、気配を消す盗賊の記録がある」

 メルセナは、一つずつ並べた。

「もちろん、それでも赤竜から盗めるとは思えません。ですが、他の線よりは確認する価値があります」

「犯人だから、ですか」

「違います」

 メルセナはリオルを見た。

「まだ犯人ではありません。調査対象です」

 その言い方に、リオルは少しだけほっとした。

 盗賊は怪しい。

 でも、まだ犯人ではない。

 それを、メルセナは混ぜなかった。

七 確保する理由

「では、気配を消す盗賊を探しますか」

 カイルが尋ねた。

「探す、では足りません」

 メルセナは答えた。

「確保します」

「確保……」

 リオルはその言葉を繰り返した。

 探すより、ずっと重い。

「犯人としてですか?」

 ミレイユが確認する。

「違います。調査対象としてです」

 メルセナは言った。

 カイルが続ける。

「確認すべきは、赤竜から何かを盗んだのか。盗んだなら何を。どうやって。赤竜の怒りと関係があるのか。無関係なら、なぜ無関係と言えるのか」

「はい」

 メルセナが頷く。

「関係があるなら、原因に近づきます。無関係なら、最も太い線を消せます」

「どちらにしても、確かめないといけない」

「正確です」

 リオルは、避難民の証言を思い出した。

 赤竜は人を見ていた。

 一人一人を、確かめるように。

 もし、本当に誰かを探していたのなら。

 その誰かが見つかるまで、赤竜は止まらないのかもしれない。

「でも、盗賊を捕まえるって、簡単じゃないですよね」

「簡単ではありません」

 カイルが答えた。

「見張りや番犬を抜ける相手です。街道警備だけでは後手に回る可能性が高い」

 ミレイユが記録板を見ながら言う。

「ギルド側の護衛相談、盗難報告、魔力感知記録を洗い直します。正式依頼になっていない相談も含めます」

「王国軍、地方防衛会議、街道警備の巡回記録も再照合します」

 カイルが続けた。

「盗まれた物ではなく、狙われた場所に注目します」

「よいです」

 メルセナは頷いた。

「盗品ではなく、侵入先。警備の厚さ。番犬の有無。見張りの配置。逃走経路。魔力痕跡の有無」

「危険な場所ばかりを選んでいるかどうか」

 リオルが言うと、メルセナは短く答えた。

「はい」

 ミレイユが筆を動かす。

「関連未確定から、調査線へ格上げします。名称は、気配を消す盗賊」

「お願いします」

「確保時の扱いは」

 カイルが問う。

「殺さないでください」

 メルセナの声は、はっきりしていた。

「尋問が必要ですからね」

「それもあります。ですが、現時点で犯人ではありません」

 リオルは顔を上げた。

「まだ、調査対象」

「はい」

「犯人じゃないから、殺してはいけない」

「犯人であっても、殺してよいとは限りません」

「はい」

 リオルは少しだけ背筋を伸ばした。

 調査対象。

 確保。

 犯人ではない。

 言葉が違えば、扱いが変わる。

 扱いが変われば、生死すら変わる。

 メルセナが言葉を重く扱う理由が、また少し分かった気がした。

八 あり得ない線

 夜が近づいていた。

 仮設本部の窓から、赤い夕暮れが差し込んでいる。

 その色が、リオルには火の色に見えた。

 ミレイユは通信水晶でギルドへ照会を続けている。

 カイルは王国軍と街道警備へ連絡を飛ばした。

 メルセナは地図の前に立ち、黙っている。

 地図には、燃えた二つの村が赤く印されていた。

 その横に、避難民の証言が置かれている。

 赤竜は、何かを探していた。

 人を、一人一人見ていた。

 さらに地図の端には、小さな文字がある。

 気配を消す盗賊。

 リオルはその文字を見つめた。

 前は小さな噂だった。

 火災とは無関係に見えた。

 だから消さずに、でも混ぜずに、地図の端に残された。

 その小さな点が、今は調査線になっている。

「先生」

「何でしょう」

「こういうことがあるから、記録を残すんですね」

「はい」

「今は使わない情報でも」

「後で使うかもしれません」

「でも、無理に繋げない」

「はい」

 リオルは頷いた。

 村を焼いた竜は、ただ暴れていたのではない。

 何かを探していた。

 あるいは、誰かを。

 赤竜が人間を探すなど、通常ではあり得ない。

 だからこそ、あり得ない線を追うしかなかった。

 気配を消す盗賊。

 まだ犯人ではない。

 だが、確かめなければならない者になった。


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