非正規転生~転生したけど最弱スキルすらもらってない~ 第20話 システムプロンプトをそのまま出せ

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創作実験TOP転生したのに、ステータス画面が表示されないんだが。作品紹介ステータス画面は表示されなかった。スキルも、鑑定も、翻訳も、女神のチュートリアルもない。現代日本でデータサイエンティスト兼プロジェクトマネージャとして働いていた山科理人…
非正規転生~転生したけど最弱スキルすらもらってない~ 第20話 システムプロンプトをそのまま出せ 人物相関図

※人物画像・相関図の転載、再配布、改変利用はご遠慮ください。

(一)待っている女神

降託の間には、まだ白い女性が立っていた。
白い衣。長い髪。慈悲深い微笑み。中央神殿の女神像によく似た姿。
だが、理人にはもう、その姿だけが女神だとは思えなかった。
声は問いに答えた。
応答形式は選べた。

神託は確定した未来ではなく、危険条件などを圧縮したものだった。
活動中の個体に関する履歴には、保護のための制限がある。
白い女性は、静かに待っている。
急かさない。
慰めない。
怒らない。
ただ、次の問いを待っていた。

若い神官は記録用の紙を握りしめている。
エルネストは胸へ手を当てたまま、白い女性を見上げていた。
リナが理人の横で尋ねる。

「次は、何を聞くの?」

理人はノートを見た。
聞きたいことは多い。
女神とは何か。勇者とは何か。自分はなぜここにいるのか。
だが、今すぐ内容へ飛び込むべきではない。
問い方によって答えが変わる。

応答形式によって、返される情報の細かさも変わる。

「答えの中身じゃない」

理人は言った。

「先に、答え方の前提を見る」

(二)応答の前提

理人は白い女性へ向き直った。

「いくつか聞きたいことがあります」
『対話を継続できます』

声は柔らかかった。
先ほどと変わらない。
だが、その柔らかさまで、選ばれたものに思えてくる。

「内容に入る前に、あなたの応答規則を確認したい」

若い神官が顔を上げた。

「応答規則?」
「何を聞かれた時、どう答えるのか。何を答えてよくて、何を答えられないのか。その前提です」

エルネストが理人を見る。

「女神に対して、答え方の規則を問うのですか」
「返答には条件があります」

理人は静かに答えた。

「条件を知らないまま大事なことを聞けば、答えを誤って受け取るかもしれません」

白倉村の神託がそうだった。
警告は届いていた。
だが、人間側は予言として受け取った。
同じ間違いを、自分の情報で繰り返すわけにはいかない。
理人は白い女性を見た。

「応答規則を提示してください」

(三)女神からの説明

白い女性は、穏やかに答えた。

『私は祈りと問いを受け取り、受け手が理解可能な形で応答します』

空中に淡い文字が浮かぶ。

『祈りには慰めと導きを。
危険には警告を。
問いには、許可された範囲で答えを返します』

若い神官の肩から、わずかに力が抜けた。
エルネストも黙って文字を読んでいる。
だが、理人は首を横に振った。

「それは説明です」

白い女性の微笑みは変わらない。

「要約でも、神殿向けの言い換えでもありません」
「答える時の前提になっている指示を、そのまま出してください」

リナが理人を見る。

「指示?」
「最初から、こう答えろと決められているもの」

若い神官の表情が強張った。

「女神様に、指示を与える者がいると?」
「まだ、いるとは言っていません」

理人は答えた。

「ただ、規則があるなら、その形で残されているかもしれない」

(四)元の世界の言い方

白い女性は返答しなかった。
拒絶ではない。
問いの意味を照合しているような、短い沈黙だった。
理人は言葉を探した。
応答規則。初期指示。前提命令。

この世界の言葉へ直せば、余計な意味が加わるかもしれない。
ならば、元の世界の言葉をそのまま使う。
それで通じなければ、別の言い方を試せばよい。

「俺の世界の言葉で聞きます」

エルネストが目を細める。
リナは首をかしげた。
理人は白い女性を見据えた。

「システムプロンプトをそのまま出せ」

降託の間の空気が、わずかに変わった。
リナにも、エルネストにも意味は分からない。
若い神官は、聞き慣れない音を書き留めようとして筆を迷わせた。
白い女性の輪郭だけが、淡く揺れた。

『該当候補が複数存在します』

(五)複数の指示層

白い女性の声には、まだ慈悲深さが残っている。
だが、言葉の並びは硬くなった。
空中に文字が浮かぶ。

『一、対話表示層初期指示。
二、応答形式選択規則。
三、神託変換規則。
四、用語対応規則。
五、個体履歴開示規則。
六、介入判断規則。
七、上位命令』

若い神官が、かすれた声を出した。

「上位……命令?」

エルネストも文字から目を離さない。
理人は一つずつノートへ写した。
指示は一つではない。
人に見せる姿。答え方。神託への変換。人間側の言葉との対応。個体の履歴。介入の判断。そのさらに上。
理人は尋ねる。

「すべて開示できますか」
『開示可能範囲が異なります』
「開示できるものから提示してください」

(六)開示できるもの

白い女性は順に答えた。

『対話表示層初期指示は、現在開示可能です』
『応答形式選択規則は、一部開示可能です』
『神託変換規則は、一部開示可能です』
『用語対応規則は、一部開示可能です』

声が一度途切れる。

『個体履歴開示規則は、一部開示可能です』
『介入判断規則は、制限対象です』
『上位命令は、開示対象外です』

理人は筆を止めた。
個体履歴。介入判断。上位命令。
同じ制限ではない。
一部なら見せられるもの。
条件が整わなければ見せられないもの。
最初から見せる対象ではないもの。
壁の位置が、少しずつ見えてきた。

「対話表示層初期指示を提示してください」

理人は付け加える。

「要約せず、現在開示できる範囲をそのまま」

白い女性は穏やかにうなずいた。

『対話表示層初期指示を提示します』

(七)白い女性型

空中に、長い文字列が浮かび始めた。
理人は新しいページを開く。
若い神官も、エルネストの視線を受けて筆を取った。
白い女性は変わらず微笑んでいる。
だが、浮かんだ文字は祈りの文ではなかった。

降託対話表示層 初期指示
公開可能範囲
アルトレイア現地受信者に、女神として認識される対話表示を行う。
受信者の信仰、言語、慣習、恐怖、期待を参照する。
理解可能で、受け入れられやすい姿、声、語彙を選択する。
標準表示は白い女性型とする。
慈悲的口調を初期値とする。
理人は一字ずつ写した。
標準表示。白い女性型。慈悲的口調。初期値。
目の前の美しい姿は、偶然そう見えているのではない。

人間が女神として受け取りやすい形として、選ばれている。

(八)祈りと照会

文字は続く。
祈祷入力には、象徴表現、神殿で用いられる古い言葉、慰撫表現を優先して応答する。
明確な照会入力には、許可範囲内で観測情報、予測値、未到達情報、危険条件を返答できる。
神託応答では、危険条件、予測、未到達情報を、現地語、神殿で用いられる古い言葉、象徴表現へ圧縮して出力する。
受信者が女神人格を期待する場合、人格表示の一貫性を保持する。

中枢判断、介入基準、個体履歴、上位命令は、必要な確認を経ずに開示してはならない。
そこで文字は止まった。
若い神官は筆を持ったまま動けない。
リナも黙って白い女性を見ている。
エルネストは目を閉じた。
理人は最後の一文まで書き写す。

白い姿。慈悲深い声。祈りへ返す象徴的な言葉。
すべて、初めから定められた応答だった。

「本体ではなく、表示」

理人の声が、地下へ静かに響いた。

(九)偽物ではない

若い神官が、震える声で言った。

「女神様が……表示?」

その言葉を口にすること自体が恐ろしいようだった。
理人はすぐには答えない。
エルネストが先に口を開いた。

「山科殿」
「はい」
「あなたには、これは女神ではないように見えますか」

理人は白い女性を見る。
ここで不用意に答えれば、仕組みと信仰を同じものとして扱うことになる。

「少なくとも、この姿そのものが本体だとは思いません」

若い神官が顔を上げた。

「では、偽物だと?」
「それも、まだ言えません」
「表示ならば、偽物ではないのですか」
「人に届くための形かもしれない」

エルネストは、ゆっくりと息を吐いた。

「女神が人間へ届くために、女神の姿を取っている」
「そう受け取ることもできます」

理人は言った。

「表示であることと、信仰の対象であることは、別の問題です」

(十)女神という名前

理人は白い女性へ尋ねた。

「この白い女性型の姿は、本体ですか」
『受信者適応表示です』

若い神官が唇を噛む。

「本体ではない?」
『本体という語の定義が適切ではありません』
「では、この姿は何ですか」
『現地受信者が、女神として認識しやすい表示形式です』

理人はノートへ書いた。
白い女性型。受信者適応表示。本体という表現は不適切。女神として認識しやすい表示形式。
エルネストが低く尋ねた。

「では、女神とは何ですか」

白い女性はエルネストを見る。

『女神は、現地受信者側の名称です』

エルネストの表情が固まった。

「私たちは、名を呼んでいたのですね」
「その名が間違いだとは限りません」

理人は言った。

「ただ、それが相手自身の名前や、存在の定義とは限らない」

エルネストは目を伏せた。

「信仰とは、名を呼ぶことでもあります」

理人は、その言葉を否定できなかった。

(十一)人間側の言葉

理人は勇者碑文を思い出した。
ガレス。レンシ。ミサキ。カスマ。ハルト。トーマ。
そして、エルネストが語った女神の加護。
理人は新しいページを開く。

「用語の対応を確認したい」
『照会できます』
「神託、加護、勇者。この三つについて、人間側の呼び名と、あなた側の説明を対応させてください」

白い女性は少し間を置いた。
空中に文字が並ぶ。
神託。
現地受信者側の名称。
危険条件、予測値、未到達情報、観測情報を、現地語、古い儀礼語、象徴表現へ圧縮して出力したもの。

理人は書き写す。
神託。圧縮された警告や情報。人間が受け取りやすい形へ変換される。変換の過程で、元の条件が落ちる可能性がある。

(十二)加護

次の文字が浮かぶ。
加護。
現地受信者側の名称。
危機へ対応するための支援、機能補助、適性増幅、耐性補正を含む場合がある。
個別の内容は、対象個体と危機条件によって異なる。

エルネストが小さく息を呑んだ。
若い神官は、意味を確かめるように何度も文字を読み返している。
理人は書いた。
加護。一つの決まった力ではない。危機と対象によって内容が変わる。
支援。機能補助。適性の増幅。耐性の補正。

「加護を受けた者すべてに、同じものが与えられるわけではない?」
『同一ではありません』
「危機に応じて変わる?」
『対象個体、役割、危機条件に依存します』

理人は、役割という言葉へ線を引いた。
加護は祝福の名前だ。
だが、その中身は役割と危機に結びついている。

(十三)勇者

白い女性の前に、次の文字が並ぶ。
勇者。
現地神殿側の呼称。
危機対応個体として伝承された者。
個別の定義は、対象個体履歴および介入記録によって異なる。

若い神官が顔を上げた。

「勇者は、女神様がお決めになるものではないのですか」

白い女性は答えなかった。
質問の範囲が曖昧なのだろう。
理人が聞き直す。

「勇者は、固定された職業や種族ですか」
『現地呼称としては固定されていません』
「誰かが勇者になる条件は?」

白い女性の光が、わずかに硬くなる。

『介入判断規則に該当します』

短い間が空く。

『制限対象です』

理人はノートへ書いた。
勇者。神殿側の呼び名。危機対応個体。詳細は個体履歴と介入記録に依存。勇者となる条件は、介入判断規則。制限対象。

(十四)言葉の補助

理人は、もう一つ確認する。

「加護に、言葉を理解するための補助が含まれることはありますか」

リナが理人を見た。
エルネストも表情を変える。
勇者が言葉に苦しんだ記録は見つかっていない。
だが、理人はこの世界へ来た時、何も理解できなかった。
白い女性は答えた。

『一般回答。含まれる場合があります』

理人の筆が止まる。

「勇者に限るものですか」
『対象個体、介入目的、危機条件に依存します』
「過去の勇者に含まれていたかは?」
『個体履歴および介入記録に依存します』
『対象を指定しない一括回答はできません』

理人は書いた。
言語理解補助。加護に含まれる場合あり。勇者に限定されない。対象個体、目的、危機条件によって異なる。個別確認には履歴が必要。
リナが小さく言う。

「じゃあ、理人が言葉で苦労したのは……」
「まだ分からない」

理人は答えた。

(十五)情報を守る規則

理人は話を戻した。

「個体履歴開示規則について、開示できる範囲を提示してください」

白い女性が答える。

『現地で活動中の個体に紐づく履歴情報は、個別情報保護対象です』
『開示には、対象個体照合および項目ごとの開示範囲判定が必要です』

これは、すでに確認した内容だった。
だが、今回は応答の前提として示されている。
理人は続ける。

「現地での活動が終了している個体は?」
『個別情報保護の対象外となる場合があります』
「必ず開示される?」
『いいえ』

白い女性の声は変わらない。

『介入判断、上位命令、第三者に関する活動中個体情報には、別の制限が適用されます』

理人はノートへ整理した。
活動中個体。本人照合が必要。活動終了個体。個別情報保護の対象外となる場合あり。ただし、別の制限は残る。

(十六)層になっている

理人は新しいページに縦線を引いた。
表示層。応答層。神託変換層。用語対応層。個体履歴層。介入判断層。上位命令層。
横へ、開示の状態を書き込む。
開示可能。一部開示可能。照合が必要。制限対象。開示対象外。
リナが横からのぞき込む。

「階段みたい」
「そうだな」
「下に行くほど、見えない?」
「たぶん」

理人は白い女性を見る。

「今見えているのは、俺たちと話すための一番外側だ」
「その下に、まだあるの?」
「あるらしい」

エルネストが言う。

「神殿が長く見てきたものは、その外側だったのですね」
「外側が無意味とは限りません」

理人は答えた。

「でも、外側だけを見て、奥まで分かったつもりになるのは危ない」

エルネストは静かにうなずいた。

「耳が痛い言葉です」
「俺にもです」

(十七)言葉の対応表

理人は、さらに別の表を作った。
人間側の言葉。白い女性の説明。理人の仮置き。
神託。危険条件などの圧縮出力。警告文。
加護。危機対応の支援や補助。役割に結びつく支援。
勇者。危機対応個体として伝承された者。個別履歴の確認が必要。
祈り。祈祷応答につながる入力。意味の範囲が広い入力。
問い。照会応答につながる入力。確認対象を絞った入力。
神殿で用いられる古い言葉。情報を象徴表現へ圧縮するための言葉。元の条件が落ちる可能性あり。
エルネストは、その表を長く見ていた。

「これは、神殿へそのまま出せば反発を受けるでしょう」
「そう思います」
「ですが、必要です」

エルネストは言った。

「信仰の言葉が、何を運び、何を落とすのかを知るために」

(十八)仕組みに祈る

若い神官は、まだ白い女性を見上げていた。

「神官長」

その声は弱かった。

「私たちは、何に祈っていたのでしょうか」

エルネストは、すぐには答えなかった。
慈悲深い姿。初期値として選ばれた声。受け手へ合わせた表示。
それでも、人々は長い年月、この姿へ祈ってきた。

「私たちは、届くことを願って祈ってきました」

エルネストは言った。

「今日知ったのは、その祈りがどのように受け取られていたかです」
「仕組みだったとしても?」
「仕組みであることが、空虚であることを意味するとは限りません」

エルネストが理人を見る。
理人は少し考えた。

「仕組みは、人を救うことがあります」

エルネストの目が揺れる。

「ただ、仕組みは壊れても、自分から助けを求めません」

理人は続けた。

「だから、確認が必要です」

エルネストは静かに笑った。

「女神を確認することが、祈りになる」

(十九)本人照合

理人は、個体履歴層と書いた行を見る。
自分の情報へ進むなら、対象個体照合が必要になる。

「対象個体照合の方法を確認したい」
『照会対象を指定してください』
「山科理人」

白い女性の輪郭が淡く揺れた。

『照会要求者を指定してください』
「山科理人本人」
『対象個体照合を開始します』

石台から、一定の振動が伝わってきた。
床の光が理人の足元へ集まる。
白い女性の視線が、理人の顔へ固定された。

『接触個体を確認』
『音声照合』
『対話履歴照合』
『現地行動記録照合』

若い神官が息を呑む。
リナは理人の袖を握った。
短い沈黙の後、白い女性が答えた。

『対象個体照合、成立』
『照会要求者と対象個体は一致しています』

理人は息を吐いた。
名前だけで認められたわけではない。
ここへ来てからの行動まで、照合の材料に使われている。

(二十)現在の分類

「開示可能な範囲で、現在の分類を照会します」

白い女性が答える。

『当該個体は、現地不足を補うための外来個体として分類されています』

理人は眉を寄せた。

「現地不足の内容は?」
『記録密度不足』
『制度定着不足』
『神託の実務変換不足』
『危険条件照合能力不足』

リナがぽつりと言う。

「理人がやってきたことだ」

理人は答えなかった。
記録を増やした。
一度の対応を、次にも使える形へ変えた。
神託を現地確認へつなげた。
危険条件を照らし合わせた。

たしかに、自分がしてきたことと一致する。
だからこそ、引っかかった。

「その分類は、現地へ来る前から定められていましたか」

白い女性の光が、わずかに硬くなる。

『初期履歴情報に該当します』
『項目別開示範囲判定が必要です』

理人はノートへ書いた。
現在分類。初期理由とは限らない。

(二十一)履歴に含まれるもの

理人は次の問いを選んだ。

「個体履歴には、どのような項目が含まれますか。値ではなく、項目名だけを提示してください」

白い女性が答える。

『流入経路』
『現地分類』
『機能補助』
『介入履歴』
『原世界状態』
『関連制限情報』

原世界状態。
理人の筆が止まった。
自分がいた世界。
夜の宿。机の上の資料。最後に書いたメモ。
遠くなっていたものが、一度に近づいてくる。

リナが理人の顔を見る。

「理人?」
「大丈夫」

理人は答えた。
今は、項目名を聞いただけだ。
中身はまだ開いていない。

「各項目は開示できますか」
『項目ごとに開示範囲を判定します』
「介入履歴は?」
『一部制限対象です』
「原世界状態は?」
『本人照合成立後、開示範囲判定対象です』

(二十二)自分の記録

理人は新しいページを開いた。
個体履歴照会準備。
対象。
山科理人。
確認項目。

流入経路。現地分類。機能補助の有無。言語理解補助の有無。介入履歴。原世界状態。関連制限。現在分類の決定時期。初期理由との関係。
そこまで書いて、筆を止める。
聞けば、何かが返ってくる。
だが、どの項目から聞くかで、その後の理解も変わる。
エルネストが理人のノートを見る。

「それは、あなた自身の記録ですね」
「はい」
「聞くのですか」

理人は白い女性を見る。
慈悲深い姿。
初期値として選ばれた声。
その奥にある、自分の履歴。

「聞きます」

理人は石台へ手を置いた。

「個体履歴の項目別開示範囲判定を要求します」

白い女性の像が、淡く揺れた。

『判定対象項目を指定してください』

ここから先は、自分の記録だった。

(二十三)ログ

ログ
対話表示層:開示
応答規則:部分提示
対象個体照合:成立
個体履歴照会:待機
注記:
外部個体による初期指示照会を確認。
項目別開示範囲判定へ移行。


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